バースデー・イブ

 久保さんに連れられて入ったのは、歓楽街の外れにある赤提灯がかかる居酒屋。
「ごめんなさい。オシャレじゃなくて…」
申し訳なさそうに言う久保さんは
「全然いいですよ。むしろ、こんな雰囲気のお店の方がご飯やお酒美味しいって聞きますから。なかなか取材NGのお店が多いと聞くので興味あったんです」

 「大将こんばんわ」
 「おー、ユキちゃん。彼女?」
 「違う違う。クライアントのお姉さん。俺みたいなダメなやつがこんなきれいなお姉さんとは付き合えないよ」
 「またそんなこと言って!それよりまた相談したいから、今度仕込みの時に来てよ」
「また調整しますね」
「とりあえず好きなとこ座って」

 「学生の頃のバイト先です。3年前まで働いて」
 「え、じゃあ25歳ですか?」
 「学年だとそうなりますね。明日が誕生日です」
 「じゃあ……同じ歳!?」
 落ち着いているし顔立ちも大人っぽいから年上だと思っていた。
 「なにすか?えーうそだって顔して。ま、慣れてるからいいっす」
 苦笑いをして昔から年齢より歳に見られ、高校生の頃にビールのサンプルを渡されそうになったことを笑いながら話す。あたしも高校生の頃に日本酒の試飲を勧められたと話したらあるあると言い笑う。
 「じゃ、今から敬語なしってことで。俺のバースデーイブに乾杯。いえーい」
 久保さんがビールジョッキをあたしのチューハイのグラスに当てる。
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