バースデー・イブ
 
 久保さんに連れてこられたのは隣町にあるバッティングセンター。夜遅くなのに週末だけあって賑わっているようで、
 カードを買って寂れたゲーセンを通り抜けた先にバッティングコーナーがあった。

 「俺これでも学生時代は4番だったんだ」
 「4番ってうまいバッター?」
 「まーそうだね。甲子園の予選で4番のキャッチャー久保って呼ばれたの懐かしいな」
 そう言いながらウグイス嬢を真似た口調でバッター久保と言いながら140キロのブースに入り素振りをする。
 「久保さんってサッカーしていそうだよね。ミッドフィルダーにいそうだから意外」
 そう言い椅子に腰掛けバットをかまえる姿を見つめる。
 「サッカーよくわからない。生粋の野球野郎だよ」
 少し不機嫌そうな顔をした後、よく言われるからなれてるけどねと笑って言いながらカードを機械に通す。

 甲高い音と共に白球が宙を飛ぶ。高校時代は野球に全く興味がなくて、甲子園予選はめんどくさいものでしかなかった。夏休みでしかも暑い中、全校応援だからと応援に連れて行かれて休みを返せと思っていたけれど、真剣な眼差しでバッドを振る久保さんがなんだか凛々しい。
 「惜しいな。ホームランまであと少しなのに」
ボールはあと少しでボードに当たりそうなのに、なかなか当たらず闇に消えていく。体力が衰えたかなと呟きながら、勢いよく飛ぶボールを必死に打つ。




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