ご近所さん的恋事情
それが逆効果になっているということを分かっていない。


「やめて。イヤです」


「イヤよイヤよも好きなうちって、言うものね。瑠璃子ちゃんは照れ屋だよね。ちゃんと分かってるよ」


全然分かっていない。180度違う解釈までしている。本当にイヤだからイヤと言った。それが分からないのはある意味おめでたい性格といえる。

瑠璃子は頑固として動かない。来た電車に放り込みたい気分だ。どこ行きでもいい。ここから消えて欲しい。


ホームに電車が入ってきた。この電車に乗せたい。どうやって?

次々に人が降りてくる。男はまだ肩を抱いているから、チラチラと見ていく人が多い。知らない者が見れば、普通のカップルに見える。

瑠璃子の嫌がる表情なんて、読む者はいない。


「瑠璃子さん、どうしたの?こんなところで止まっていて」


困っている瑠璃子に気付いたのは渉だった。瑠璃子は救世主だと思い、目を潤ませる。頑張ってはいたけど、怖かったのだ。
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