ご近所さん的恋事情
渉は、呼び止める声と近付くヒールの音に足を止めて、振り向こうとした。


「え?瑠璃子さん…」


その瞬間、後ろから強く抱き締められた。


「お願い。疲れてるのは分かっているんだけど…一緒にいて。お願い…」


瑠璃子の心は渉を求めていた。自分の気持ちはわがままだと思う。相手のことを思いやれないなんて、最低だし、子供のすることだ。三十路を過ぎた立派な大人がする行動ではない。渉にしたら、瑠璃子はただのご近所さんでしかないはずだから、極まりなく迷惑だ。

分かってはいるけど、それでも今は渉が欲しかった。久しぶりの気持ちを我慢できなくなった。


「瑠璃子さん」


渉は、自分の胸に回されていた手を握った。


「なんかさ、俺…勘違いしそうになるんだけど。瑠璃子さんも俺のことを思っていてくれるのかと…」


「え?渉くん、今、私もって言った?」


瑠璃子さんも…瑠璃子はここまで大胆に動いておきながら、渉の言う意味を必死で考えた。
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