ご近所さん的恋事情
腹の虫が鳴る音が聞かれていたことに、恥ずかしくなった瑠璃子はお腹を押さえる。

そんなに大きな音だった?


「あはは、そんなの聞こえてないよ。でも、早く入りなよ。ここのねぎま、絶品だから」


よく笑うこの男、渉はこの焼き鳥屋の常連客である。

週に1度は仕事帰りに「とりこう」に寄って、焼き鳥を5本食べ、芋焼酎を飲んでいる。渉の家はここから、徒歩10分のところにある一軒家で両親と妹と暮らしている。


「ありがとうございます」

瑠璃子は渉の横を通って、中に入る。渉は瑠璃子が入ったのを確認して、ドアを閉めた。


「いらっしゃいませ!お、渉くん。おや、そちらのきれいなお姉さんは?」


焼き鳥を焼く店長はいつも威勢が良い。この焼き鳥屋の名前は店長の「孝司(こうじ)」から取ったものだ。


「そこでナンパしてきた」


「え?違う!されてないです」


瑠璃子は思いもよらない渉の言葉に慌てた。両手を大きく振って、はっきりと否定する。
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