如何にして、コレに至るか

ーー

「ますます、心配になってくるねぇ」

苦笑を肩を落とすように零す彼は、私のスマホを持ちながら言うのだった。

彼の部屋。1LDKのアパートは、宮本さんらしい落ち着いた部屋だ。仕事でめったに帰らないからと、部屋には物が最低限しかなく、散らかっている様子もない。

私のワンルームに招くことがあまりないのは、こういった点もある。宮本さんが来るともなれば、ホコリ一つ残さないほど掃除しなければならない。

リビングでくつろぎながら、ソファーにうなだれる彼からスマホを返してもらう。

「そいつ、絶対、さっきの男だ」

「まだ決まったわけじゃないですよ。どちらにせよ、もう相手がアクセス出来ないようブロックしてますし、相手のアカウントも削除されているみたいだから大丈夫かと」

この一連のやり取りは、宮本さんの『もうしかしたら』があったからだ。

現代社会の付きまといーーストーカー行為というのは、何も現実だけでなく、ネット内でもあるとのこと。

登録しているSNSから個人情報を仕入れたり、顔が見えないことを良いことに近づいて来る奴もいるらしい。

彼はそんな懸念を持っていたが、私自身が、顔も分からない相手と親密になる是非を問いたいタイプなもので、SNS等をやっていても、顔が分かる友人間でしかやり取りをしていない。

プライバシーは守っていると思い、大丈夫だと言う前、一ヶ月前ほどに彼の懸念に触れる事態があったことを思い出したのだった。

「なんで、言ってくれなかったの?」

「些細なことだと思って」

あるSNS。放置していて、ログインなんか何年もしていない場所から、一通のメールが届いた。

○○さんより、メッセージが届いております。

との文面。
内容は、私のプロフを見て、気が合いそうだからメッセしてみました。程度のこと。


いつもなら無視するが、その日は暇で、やることもなく、暇つぶし程度に付き合った。

相手は女で、年齢が私と同じ。実際、話があったため、数通メッセを繰り返していたが。

『どこ住みですか?良ければ、会いたいなー。話もしたいし、相談したいこともあるの』

そのメッセに断りを返すのは当たり前だ。

『ごめん。リアルに会うのは無理』

『何でですかー?私たち、いい友達になれるよ!ね?友達なんだから、名前教えてよー』

『無理。それ以上言うなら、メッセしないで』

『なら、メアド教えて下さい!番号も!私、今大学で、酷いいじめを受けているんです!聞いてくださいよー』

『相談ごとなら、このメッセでも出来るよ。それなら、きちんと聞くから』

そんなやり取りだった。
相手はひたすらに番号教えて、どこ住み、と何かにつけて聞き出そうとするので、呆れ、ブロックしたわけだが。

「顔も見えないんだから、プロフィールもでっち上げだろうし。そいつ絶対、男だよ」

「だったんですかねー」

削除していなかった一連のメッセを見た彼の感想は、私の思うところでもあった。

その人物が、喫茶店で転んだ男と繋がるかは謎だけど。

< 17 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop