TRIGGER!2
「ん?」
「美和っていうどっかのホステスだよ。知らないか?」


 彩香の質問に、ジョージは笑う。


「知ってるぜ。スナック『道草』の美和ちゃん、『ライム』、『ストロベリータイム』、あとクラブ『ゴージャス』と『紫煙』にもいたなぁ、美和ちゃん♪」


 嬉々として答えるジョージに、彩香は深いため息をついた。


「どんだけ知ってるんだよ」
「ホステスで美和ってだけじゃ、そこら中にいるだろ。何があったんだ?」


 彩香はよっこらしょと起き上がると、ビールを一口飲んでからタバコをくわえる。


「隼人の知り合いの美和だよ」
「・・・・・・」


 そう言うと、ジョージは少しだけ、眉をひそめた。
 だがそれも一瞬だけで、ガハハと笑う。


「何だよあいつ、いつの間にホステスにハマってるんだぁ?」


 ガラじゃねぇよな、と笑い飛ばすジョージを、彩香はじっと見つめる。
 ジョージはそんな彩香に、ビールの缶を心持ち傾けて。


「あ、これ貰っていいか?」
「テメェの飲みかけなんて返してもらいたくもねぇよ」


 ありがとな、と、ジョージは一気にビールを飲み干して。


「んじゃ、ごちそーさま」


 立ち上がると、彩香の部屋を出て行った。
 どうやら、缶ビール一本くらいじゃ何も話してくれなそうだ。
 かと言って、ジョージなんかに頭を下げてお願い申し上げるのもごめん被りたい。
 時計は午後2時を少し回った所だったが、何故か眠気が覚めてしまった。
 と言うより、どうも身体の周りにきな臭いものが漂っているような気がしてならない。
 根元は何だ?
 あっちで見た、あの心療内科の医者の怪しい取り引きか。
 風間が取り乱した、美和という女のせいなのか。
 ーーーそれとも、今朝の夢・・・。


「あり得ねぇな」


 残っていたビールを飲み干すと、彩香は立ち上がって部屋を後にした。
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