TRIGGER!2
「ここの院長先生はとってもいい方よ。何よりも患者さんに親身になってくれるし、腕もいいわ」
建物の脇道は日陰になっていて、車椅子からも解放された女性はハンカチでパタパタと顔を扇ぎながら言う。
へぇ、と彩香は頷いて。
「この子はここに入院してるの?」
「えぇ、一週間くらい前から入院しているの。もうすぐ退院出来るって先生はおっしゃってたけれど・・・ここに入院している人達は長くても1ヶ月くらいで退院なさるそうよ。他の医院ではもっと長引く病気でも、佐久間先生はあっという間にちゃんと治して下さるから」
「凄い先生なんだね」
そんな会話をしながら、病院の裏口に着いた。
「ありがとう、ここで待っていて下さる? パンフレット持ってきますから」
「車椅子押すの大変でしょ。部屋まで行ってあげるよ」
彩香の申し出に、女性は首を横に振った。
「有り難いんですけど、診察する場所以外は部外者立ち入り禁止になってるの。ほら、デリケートな病気の患者さんばかりだから」
「そっか」
彩香は車椅子から手を離し、少女の前に回るとその手を取る。
「早く退院出来るといいね」
少女は無表情で何も答えなかったが、女性は笑顔を浮かべてありがとう、と言った。
そして、もう一度彩香に待っているように言うと、少女と共に病院の中に姿を消した。
"自らを自分で殺す事になるだろう"
ふと、彩香は雛子の言った言葉を思い出した。
あの少女の左手首から肘にかけて、無数の傷痕があったから。
「自分で自分を痛めつけて、何になるんだよ・・・」
彩香は軽く息を吐いて腰に手を当てると、二階の窓を見上げる。
四階の住人が見つけた"ドア"。
そして、あの女が姿を見せた場所。
足がかりは全くなく、あのドアの種類を見分けるならハシゴでよじ登るか、中から確かめるしかない。
だが、診察スペース以外は立ち入り禁止になっている。
選択肢は2つ。
医院が営業している時間にあっちの世界から建物の中に入って確認する。
後は、誰もいない夜にでもハシゴを持ってきてよじ登る。
どっちにしろ、人目があって周りが明るい今の状況では難しい。
「二度手間どころか、三度目の正直だな」
そう呟いた時、女性がパンフレットを手に、外に出てきた。
「ありがとう、助かったよ」
それを受け取りながら、彩香は礼を言った。
「お身内の方も、何か心配な事があったらここにいらっしゃるといいわ」
そう言う女性に、彩香は首を傾げる。
「身内?」
「えぇ。だって、あなたは心も身体も健康そうですもの」
「あ・・・あははは」
どうやら女性は、彩香がここに営業時間を見に来たのは身内の為だと思っているらしい。
建物の脇道は日陰になっていて、車椅子からも解放された女性はハンカチでパタパタと顔を扇ぎながら言う。
へぇ、と彩香は頷いて。
「この子はここに入院してるの?」
「えぇ、一週間くらい前から入院しているの。もうすぐ退院出来るって先生はおっしゃってたけれど・・・ここに入院している人達は長くても1ヶ月くらいで退院なさるそうよ。他の医院ではもっと長引く病気でも、佐久間先生はあっという間にちゃんと治して下さるから」
「凄い先生なんだね」
そんな会話をしながら、病院の裏口に着いた。
「ありがとう、ここで待っていて下さる? パンフレット持ってきますから」
「車椅子押すの大変でしょ。部屋まで行ってあげるよ」
彩香の申し出に、女性は首を横に振った。
「有り難いんですけど、診察する場所以外は部外者立ち入り禁止になってるの。ほら、デリケートな病気の患者さんばかりだから」
「そっか」
彩香は車椅子から手を離し、少女の前に回るとその手を取る。
「早く退院出来るといいね」
少女は無表情で何も答えなかったが、女性は笑顔を浮かべてありがとう、と言った。
そして、もう一度彩香に待っているように言うと、少女と共に病院の中に姿を消した。
"自らを自分で殺す事になるだろう"
ふと、彩香は雛子の言った言葉を思い出した。
あの少女の左手首から肘にかけて、無数の傷痕があったから。
「自分で自分を痛めつけて、何になるんだよ・・・」
彩香は軽く息を吐いて腰に手を当てると、二階の窓を見上げる。
四階の住人が見つけた"ドア"。
そして、あの女が姿を見せた場所。
足がかりは全くなく、あのドアの種類を見分けるならハシゴでよじ登るか、中から確かめるしかない。
だが、診察スペース以外は立ち入り禁止になっている。
選択肢は2つ。
医院が営業している時間にあっちの世界から建物の中に入って確認する。
後は、誰もいない夜にでもハシゴを持ってきてよじ登る。
どっちにしろ、人目があって周りが明るい今の状況では難しい。
「二度手間どころか、三度目の正直だな」
そう呟いた時、女性がパンフレットを手に、外に出てきた。
「ありがとう、助かったよ」
それを受け取りながら、彩香は礼を言った。
「お身内の方も、何か心配な事があったらここにいらっしゃるといいわ」
そう言う女性に、彩香は首を傾げる。
「身内?」
「えぇ。だって、あなたは心も身体も健康そうですもの」
「あ・・・あははは」
どうやら女性は、彩香がここに営業時間を見に来たのは身内の為だと思っているらしい。