もしも私がーcasket in cremtion。
「……もしかして、と思っていたんだけど、キミが僕に無断で立花圭子に近づいたのは、僕のためか?」
「……そうね、そうかもね。もしかしたら貴方の体が、01を拒絶し始めているんじゃないかと気づいたらね、いてもたってもいられなくて……でも結果オーライね。これで貴方の願いは叶うかも知れない。」
エリスは肩をすくめてウィンクする。
葵は苦笑しながら小さく頷いた。
「立花圭子は唯一01に、本当に選らばれた娘かも知れないからな」
真剣な表情で遠くを見るように葵は続けた。
「01を投与された者は、どんな者でも必ず、烙印のような、アザが出来る。組織のシンボルマークである、逆十字に、羽のついている胎児のようなアザが……でも、それが何処を探しても立花圭子には無かった。試しに僕の心呪縛をかけてみても、暴走するしな。」
「そうね、始めは、選ばれた者かどうか試そうとしたのと、組織の存在を露見させる為に彼女を化物の姿にしたんだったわね……」
過去を振り返るエリスに、葵は残念そうに呟いた。
「ああ、でも結果的に僕が抑えきれないくらいに暴走し、彼女の母や姉を始め、たくさんの犠牲が出た……」
「そうね……でも、核心出来たわ。彼女は選ばれた、恐ろしいまでの力に。」
エリスは強い口調で言った。どこか情熱をおびた瞳だ。
すると思い出したように「ふふふ」と笑った。
「貴方と出会って、何十年経ったのかしら?」
「さあな」
微笑んで答えると、前方に何かを見つけて呟いた。
「火だ。」
エリスは小さく驚いて、振り向いた。
「火だわ。どうしてスプリンクラーが可動しないの?」
驚くエリスに、葵は冷静に淡々と告げる。
「やつらの仕業だろうな。この爆発も。」
「やつらって?」
「多分、暗部の花組だろう。あそこの主覺とはもとから馬が合わなかったし、あいつは僕の事、疑ってたからな。組織を裏切るんじゃないかって。まあ、当たってたんだけどね」
自嘲気味にそう笑う。
ゴウゴウと手繰り寄せるように、炎は唸って近づいてくる。その炎を見つめながら葵はポツリと呟いた。
「俺にやれることはもう終わったのかも知れないな……」
どこか達観したような葵を後ろから抱き寄せ、真剣な、深刻な表情でエリスは呟いた。
「この悲しみと、憎しみの連鎖をあの娘は断ち切ってくれるかしら?」
「その為に、幟呉達をわざわざ、あの子の元に向かわせたんじゃないか。」
「幟呉達が裏切ると見込んでね。」
「ああ、見事に裏切ってくれたよ。」
無邪気に笑みを浮かべる葵に、エリスはわざわざ呆れるように言った。
「幟呉がそれ知ったら怒り狂うわよ。あの子利用されたりするのキライなんだから。」
「まあな。だが、あいつらとエリックがいる限り、あの子は挫けないだろ。でなきゃ、鷹で連絡を取り合っているのを見逃した意味が無くなる。」
楽しむように言って、一呼吸おくと、真っ直ぐ前を見つめながら生き生きと言った。
「それに、彼女は僕の目を真っ直ぐ見て言ってくれたからね。」