もしも私がーcasket in cremtion。
「そうね、私達が望んだ言葉を言ってくれた。」

 エリスの瞳にも光が宿ったようだった。
 葵は、そんなエリスを愛しそうに見つめた。

「エリス、ちゃんと言ったこと無かったと思うけど、キミが死んだ時、心臓が握り潰されて爆破したのかと思った。」

 エリスは一瞬驚いて、そして葵を見つめ返す。

「世界で一番愛してる。思えば、こうして触れ合ったのも数年ぶりだな」

 エリスの目を真っ直ぐに見つめながら、葵はエリスの腕をそっと撫でた。
 葵を支える腕に、より愛しさがこもる。

「可笑しなもんだ、初めてキミに会った時はキミのこと大嫌いだったのに。」

 振り返るように言うと、「クックック」と笑った。

「キミを好きになった日のこと、忘れない。」

 葵の瞳がもう光を映していない事を、エリスは悟った。葵の瞳は虚ろだった。
 息が荒くなり、エリスの腕を掴む手が苦しそうにもがいた。
 それでも、見えないエリスに微笑む葵に、エリスは涙を浮かべ

「私も、忘れない。」

 精一杯に微笑んで見せた。その時

 ボッボボボ という音がして、次に ――ヴン―― と音がした。

 ヴィアンカに引火し、シールドが破られたのだ。
 炎はいったん天井近くまで巻き上がると、勢いを増して、ヴィアンカに乗り、走り出した。
 コンクリートの固まりが二人の周辺へと落ちて行く。

「一緒に行こう、エリス。」

 葵の息は絶え絶えで、苦しそうに、呟く。
 エリスは微笑み

「ええ、もう眠りましょう……翔。」

 優しく囁いた。
 炎が二人を包み込み、ドォン!という低い音と共に、瓦礫が二人の頭上に向かって、重い重い、コンクリートの布団をかけた……。
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