もしも私がーcasket in cremtion。
* * *
研究所が焼け落ちていく、やがて消防車が駆けつけて来た。私達は茂みに隠れて、消火活動の様子を見ていた。何故だか離れてはいけない気がして……。
やがて、瓦礫の中から見つかったのは、二人の遺体だけだった。あんなに人がいたのに、逃げ遅れた人はいなかったのだろうか? と疑問に思うと、菊之ちゃんが
「あんたらがあの扉に入った直後に主覺が退避命令を出したんよ。」と教えてくれた。
こうなることを、分かっていたのだろうか? 心の中で呟きながら、葵を思い出した。
思い出された葵は、憎まれ口を聞いたり、人を嘲り笑ったりした葵ではなく、何故だか、優しい笑顔だった。
その二人の遺体は、エリスと葵翔だった。
その遺体はまるで、もう二度と離れないように、というかのようにエリスが葵を抱きしめ、二人の手は固く握りしめられていたという。
遺体には殆ど外傷が見られず、葵の髪は白髪になっていた。外傷が殆ど無かったのは、瓦礫と瓦礫の間にうまく挟まれ、炎からはその瓦礫のおかげで、焼かれずにすんだ為らしい。
死因は煙ではないかと言われているが、実のところは、あまりよくは解っていない。と、組織の手が及ぶ前に二人の遺体を引き取りに行った時、警官に聞いた。解剖をしても、はっきりとは解明できなかったらしい。その警官は「これで捜査は打ち切りになる」と残念そうに語った。
二人の遺体を引き取りに行くその前に、海くんを自宅に届けた。
海くんの顔は穏やかだった。葵とエリスも綺麗な顔をして、何故だか幸せそうに見えた。
しかし、これらが世間で報じられる事は無かった。
その日の新聞には『化電製薬火事になる』と『海くん無残な姿で見つかる』と大々的に出ていた。が、それだけだった。
海くんと火事の詳しい事も、葵とエリスの遺体が見つかった事も、何一つ書かれてはいなかった。
エリック達はこの二つは迷宮入りになるだろうと言った。