もしも私がーcasket in cremtion。

 *****

 数日後、事態が収まった頃を見計らって、私達は、研究所があった場所を訪れた。
 研究所は半分が焼け落ちていた。

 二人を埋葬した時、エリックから葵の事を聞いて、私は自分の事を少し恥じた。

『翔はね、本当は二十五歳なんだよ。01を打たれて成長しない身体、【不老】になったんだ。』

 その時のエリックの悲しそうな表情と、私が葵に言った言葉が頭を離れなかった。
 きっと、傷つけてしまっただろうという思いが巡っていた。

 すると、足元にあった何かを、足で軽く蹴った音がして、私は下を向いた。拾い上げると、それは本のような物だった。

 皆を呼んで本を開いてみる。
 殆どが焼かれていて、読めるページは殆ど無かった。
 一ページまた一ページとめくって行くと、読めるページに行き着いた。

『私達はこの世界で結ばれる事は無いのかも知れない。だけど、私はそれでも良いと思っているの、彼を心から愛しいと思えるから……。』

 その日付は半年前のものだった。
 ちょうど、私がエリスを殺してしまう前日だった。
 すると、エリックが呟くように言った。

「姉さんは一度、死ぬ前に僕にこんな事を言ったんだ『翔はいつも、周りをあざ笑うかのような態度を取って、貴方にも心を読まさないように、コントロールして辛くあたっていたけど、もし貴方が真実を見て「大人の勝手だ」と思ったとしても、嫌いにならないであげて、心(真実)を読める貴方だからこそ、人間を、大人を、翔を、嫌いにならないであげてね』って寂しそうな心でそう言ったんだ……。」

 エリックの瞳から大粒の涙が流れ出した。ずっと我慢していた涙だった。
 私はエリックを抱き寄せ、空を見上げた。

 私の視界に入らない所で、靭がコンクリートの破片を握りしめ、眉間にシワを寄せる。顔を曇らせ、ただ一点を見つめていた。

 今日は快晴、どこまでも青空が続いている、そんな日だった。



        END



< 109 / 109 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~

総文字数/97,712

ミステリー・サスペンス102ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
山荘で開かれる交霊会で起こった惨劇。それに呼応するように怪奇現象が起こり始める。ミステリーホラーここに開幕! 注意・この作品は怪事件捜査クラブの続編ですが、とあるところに応募するにあたり続編ぽくなく書きましたので、ドッペルゲンガーの件については触れていません。 なので、前作を知らない方でも問題なくお読みいただけると思います。 ちなみに年代も今作と前作では違っています。
レテラ・ロ・ルシュアールの書簡

総文字数/243,425

ファンタジー217ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『 悲劇と希望の物語 』 私の中におっさん(魔王)がいる。の番外編になりますが、この作品単体でも問題なく読んでいただけると思います。 悲劇が書きたくて書いたので、ハッピーエンドがお好きな方はご注意を。 一応、救いはあります。(あるはずです) 竜王機関がなぜできたのかが解ります。
私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~

総文字数/195,864

恋愛(その他)148ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
三条の屋敷、センブルシュタイン城でお世話になることになったゆり。 そこで知る三条家に隠された真実とその本懐とは? 前回のあらすじ。 五人の男に呼び出され、異世界へやってきたゆり。ゆりの中に入ってしまった魔王を手にするために彼らに恋に落とそうと目論まれる。だが、そのことを知ったゆりは反撃に出て、魔王は自分のものだと宣言する。しかし、そこに襲撃者が現れ、魔王を宿す者を殺すと言う。突如始まった戦いに戸惑うばかりだったゆりだが、謎の音によって全員がピンチに陥った。みんなを助けたいと願ったゆりに魔王の力が呼応したが、それぞれ別々の地へ飛ばされてしまう。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop