もしも私がーcasket in cremtion。
呟き終えるとほぼ同時に、黒い影が私達を覆った。とっさに上を見ると、そこには海くんの手があった。鋭い爪がむき出しになっている。
一瞬私にはスローに映ったその爪が落ちて来る。その一瞬で頭の中に考えが廻った。
(あんなのに当たったら、体が潰されるか、抉られる!ヤバイ!今の私じゃ、避けられない!)
目を固く閉じると歯を食いしばる。
それと同時に、首の辺りが強く引っ張られた。
(やられた?)
目をそっと開けると、座り込んでいる私の足ギリギリ、目の前を抉り取ったような爪跡が、今までいた場所につけられていた。
その爪跡の大きさは小川のようだった。それを見て私はゾッとした。
ふと、首が苦しいと思うと、背後から幟呉の怒声が耳に響いた。
「このバカ!ボサッとするな!死ぬぞ!!」
耳を押さえながら、そっと、後ろを見ると、幟呉が私の服の襟を持っていた。(そうか、あの時引っ張られたのは、幟呉が助けてくれたんだ。)
お礼を言おうとすると爪跡の反対側から声がかかった。永璃だ。
「嬢ちゃん!大丈夫か!?」
「うん!大丈夫!」
そう叫んで、手を振ると幟呉がため息をついてぶっきら棒に言った。
「お前、礼ぐらい言ったらどうだ?永璃が飛針で奴の気を惹かなかったら、お前の足は無いぞ。」
「え?」
幟呉の方に振り返ると同時に冷たい声色が飛んで来た。
「お前はここにいろ。邪魔だ。」
そう言うと、エリックの方に向き直って
「エリック、こいつをよろしく。」
「はい。幟呉、任せてください」
エリックはにこやかに返事を返す。
「ちょっと、待ってよ!」
「「待って」じゃない。コントロールが利かないまま変身されても迷惑だ。」
声色を変えずに言うと、防戦している永璃の方へ走って行った。
その姿をふくれっ面して見送っている私の隣に、エリックが来た。
「幟呉は、圭子さんを心配してるんですよ。」
「どお~だかっ!」
そう言うとふくれっ面を解いて、戦いを見つめて思った。
(見てるだけなんて……私だって、何かの、皆の、役にたちたいよ!)
「わっ!」
海くんの攻撃の爆風が飛んで来る。
幟呉達は上手く避けているみたいだけど、あの爪のせいで海くんに近づけないでいる。一方、菊之ちゃんと戦っている靭は――。
ドンドン!
という銃の音が響く。
靭が銃を発砲するが、菊之ちゃんも上手く避けて、と攻防戦が続いているみたいだ。菊之ちゃんはあらゆる武器を用いて戦っているみたいで、どこに隠しているのか、銃を発砲したり、クナイや威力の小さい手榴弾なんかを靭に向けて投げつけている。
(凄い……)
そう思った、その時!
ゴカッ!
という今までとは少し違う音が響く。
見ると、爪が永璃のお腹をかすめた。
「うお!危ねぇ!」
「永璃!気を抜くな!」
「分かってるよ!」
その姿を私の横で見ていたエリックが呟いた。
「……まずいな。後から来ますよ。」
私はその意味が分からずに首をかしげた。
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