もしも私がーcasket in cremtion。
――鈍い音が響き渡る。
ごめんね。ごめんね。何度も心の中で繰り返されたこの言葉は、心が痛いほど、鈍い音となって、血の雨を降らせた。
か細い体を突き抜けた右腕は、その瞬間の感覚を何も残さず、ただ密かに震えていた。
か細い体は突き抜けた瞬間、ぶるっと動き、流れ出ていた血と、貫かれた臓器の破片と、体の中の血とが弧を描くように、赤が吹き出した。血の雨のようだった。
赤く染まった手を、海くんの体から引き抜くと、海くんが私の体へ、倒れ込んだ。
その姿は、元の海くんの姿に戻っていた。血だらけで、所々に穴や傷があるけど、可愛い顔をした、海くんの顔だった。
「ごめん、ごめんね」
涙で、海くんの顔がよく見えない。
そんな私の姿を見て、菊之ちゃんは体を引きずりながら、側に来た。その目は涙をいっぱい溜めていた。
「ええんや、これで……。どうせ、助からんかってん!拒絶反応を起こして、治まった奴はおらんし、それに、どの道、拒絶を起こした奴は、消されるんやから……。」
しかも、と声を荒げる。
「どこまで、持つか、調べられんねん、ただ傍観しとるだけやねん!見殺しにすんねん!」
一気に溢れ出す涙を、肩になすりつけると、
「これ以上……苦しまなかっただけ、ええ……ねん」
言葉が出せないほど、嗚咽する菊之ちゃんを見ると、靭は視線を外し
「葵翔(あおいしょう)……主覺(アイツ)のせいだろ?あんな薬があるから。」
さっきと同じような、冷淡な口調だった。
しかし、その顔は、怒りをあらわにしていた。
(……そうか。何が気にくわないんだ?って思ってたけど、怒ってたんだ。静かに怒る人なんだ。どうしても許せないってくらいに、怒ってたから、あんな口調になってたんだ。誤解されそうな、怒り方なんだね)
私がそれに対して納得して、苦笑した時、エリックが何かを言いかけた。
「違う!翔だって――」
するとその時、私の腕の中で、海くんが動いた。
「海くん!心臓外れてたん――」
そこまで私が言った時、海くんの小さな唇が動いた。
「おねぇちゃ……あり……がと……」
弱々しい声でそう言った。
(ありがとう?……こんな私に?)
「どっても、苦しかっだんだ……バケモノじゃ、なぐじてくれで……ありが――」
そこで、海くんは静かに瞳を閉じた。
「本当やったら、即死やねんけど、01の効果なんかな?それとも、蘇生術のなごりなんかな?生きとったわ……。礼、言っとったな。」
菊之ちゃんは、涙ながらにそう言って微笑んだ。
本当に良かったんだろうか?
私は菊之ちゃんの顔を見ると、海くんの顔を見つめた。
その時、後ろから静かに声がかかった。