もしも私がーcasket in cremtion。
「葵の所に行くぞ。」
「え?」
振り向くと幟呉だった。
すると、怒りが止んだのか、内に秘めているのか、靭が元気よく言った。
「だね!幟呉!こんな実験ここだけでもさっさと終わらせなきゃ。」
「時間が無いんだから、早くして下さいね。」
エリックが幟呉達に微笑みかける。すると永璃が私を見て促した。
「行くぞ、嬢ちゃん。」
「え?だってエリックに会うだけじゃないの?葵って、ボスでしょう?それに海くんは――」
私の焦りをエリックが遮った。
「ごめん、圭子。実は、三人を呼んだのは僕なんだ。幟呉達とは鷹を使って、定期的に連絡を取り合っていてね。」
「そうなの!?」
私が驚きつつ、苦々しく靭達を見ると、靭と永璃はへらっと苦笑し、幟呉は逆に見つめ返してきた。
何が悪い、と言いたげだ。
(ううっ!むかつく!)
「この数年、翔の様子がちょっと変で、半年前、ちょうど、エリス姉さんが死んだ頃からかな? もっと、様子が変になった、っていうか、過激になったんだ。もともと、口が悪い人ではあったんだけどね。」
「悪いのは口だけでなく、性格もだろう?」とぶっきら棒に言うと、靭が苦笑しながら
「幟呉、本当にキライなんだね。」と言った。
私は、エリックの話に引っかかる言葉があるのに気がついた。
「あの、エリス姉さんって……もしかして」
「その通り。エリス・カーティス・ダイゼルは僕の姉だよ。」
そのまま、エリックは、名字が違うのは、姉弟で施設に入っていて、養子先が違かったからだ。と説明した。
でも、私はその声が耳に入ってこなかった。
目の前がくらっと歪む。
と、同時に罪悪感がわっと湧いて出た。
何かを、いえ、謝罪をしなくちゃと、頭に浮かんでくるのに、喉の奥から言葉が出なかった。
そんな私を見て、エリックは慌てたように手を横にふった。
「あ!でも、姉さんが死んだからって、キミを憎む気持ちとかは全然ないから!」
エリックはやわらかく笑った。
複雑な気持ちで、俯く。
とてもエリックの顔を見る気になれない。
そんな私の肩に、エリックは手を置いた。
自分の体に引き寄せる。
オレンジの香りのような、さわやかな良い匂いが、ほわっと香って、一瞬ドキっとする。
そのまま、囁くようにやわらかな、しかし、悲しい声が耳のそばで鳴った。
「多分、姉さんは分かってたんだと思う。自分が死ぬ時を……」
びっくりしてエリックを仰ぎ見ると、エリックは私の肩から手を離した。
そして、話を切り替えるように
「でね、翔を何とかしたくて、幟呉達に相談してみたんだよ。」
明るくにこりと微笑む。
「じゃ、エリックに会うだけじゃなかったんだ。」
私が独り言のように呟くと、靭が苦笑なのか笑顔なのか、微妙なラインの笑みを浮かべた。