コトノハの園で
「桜ちゃ~ん。許してくれたらなんでもするからっ」
「……なんでも?」
「うっん……、可能な範囲なら」
桜ちゃんは片方の口角だけを上げてにやりとする。
「分かった。ならねぇ――」
言いながら、クリスマスカラーのリボンが結ばれた包みをふたつ、私にくれた。
「はいっ。お口に合いますように」
「ありがとう。じっくりと味わうからね」
「ふたつあるでしょ? ひとつは森野さんの。勉強教えてくれたお礼。菜々ちゃんから渡しといてね」
「えっ……? じゃあ、桜ちゃんが渡さなきゃ」
「ゴッメーン」
とても大げさに謝られる。何事かと訊くと、どうやらこの後用事ができてしまったらしい。誘っておいて申し訳ないと、散々頭を下げられる。
「気にしてないよ。大丈夫。――でも、森野さんに渡すくらいなら、さっと済ませられるからダッシュで行ってくれば?」
それは無理だと何故か断られる。
「菜々ちゃん来るの遅くて、もうタイムオーバー」
「急いだんだよっ?」
「なんでも、頼まれてくれるんでしょ?」
「っ」
「桜、これからデートになっちゃって。もう急ぐからまたねっ! よろしく~っ」
「ちょっ、桜ちゃんっ!!」
一目瞭然の嘘をつき、桜ちゃんは帰ってしまった。密かに潤んだ目に頬染めた顔――私は、その意味を問うことをしないまま見送った。