コトノハの園で
――……、
「――だいぶ、慣れてきたんじゃ、ないですか?」
「……、?」
意味が分からないのは当然。
だから――うん。
眼鏡をかけ直しながら首を傾げる森野さんが私の方向を見る。
最近になって、やっと、少しだけ交わるようになった視線が恥ずかしくて、私はひょいと、マフラーに顔を埋める。
……勿体ない。逸らさずにいるべきじゃないの?
もう、そんな機会、ないのかもしれないんだし……。
外気に晒されて冷たいはずの耳が、とても熱い。
「九月の初め頃。とあるカフェでの、森野さんとお友達の会話を抜粋します。ああそうだ。お友達って、見た目チャラいけど良い方みたいですね。その彼女さんも素敵でした。――『いい加減彼女がいたらなぁ……けど女性が苦手。けど慣れたい。けど、そんなのに協力してくれる人なんていない』――などなど。大きく間違えている部分があったら、今の段階で訂正お願いします」
反応は何もない。
「リハビリ、でしたっけ? ……うーん。そうですね……そんな慈善事業的な恐怖克服に、見返りなしで付き合ってくれる人はなかなかいないかと……。いたとしても、頼むなんて、そんなこと、できませんよね?」
茫然自失。反応は、しないんじゃなくて、やっぱりできないみたい。
「私が卒業までにしたかったこと――本を読むことも本当です。でも、あとひとつ。――森野さんの役に立ちたかった。自信は……ありません。迷惑なだけだったかも、しれない」