コトノハの園で


顔も見ず、ろくに挨拶もしないまま帰ってしまったのはいけなかった。


冷静に、なんて……そんなこと、どこかへ飛んでいってた。


桜ちゃんから預かったクッキー。渡すのを忘れてしまい、一旦戻った時も、逃げるようにベンチに置いてきてしまった。送り主の名前を片言でしか伝えられなかった。





寒空の下。私は、泣きながら道を歩く。


隠さなきゃいけない人はもうここにはいないものだから、溢れる涙が止まらなくなった。


ぽたりぽたりと落ちる水滴を、見知らぬ他人が遠慮がちに眺めていく。遠巻きに私を哀れんでいる。


まるで、イブなんて日に振られたみたいだ。


……でも、そう変わらないんだ。


きっと。







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