コトノハの園で
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イブから二日過ぎた日の夕方、職場に健人が来た。
「今朝、電話したろ?」
「あっ……ああっ、そうだね」
「ったく。上の空で勝手に切りやがって――心配するだろ」
労わる言葉。とても僅かな音で、僕以外には響かないように、健人は言う。
「ありがとう。それとごめん。ちょっと仕事溜まってて。段取り狂っちゃってさ、昨日終わらせるはずのものが今日だよ」
「へぇ、珍しい。そういうの、透は得意なのにな」
「っ、うん……。少し出られるから待っててよ」
僕は健人を連れ、図書館の向かい側にある喫茶店に入った。中庭だと寒いと文句を言われそうだったし、足を、運びづらかった。
……馬鹿みたいだ。
居るはずなんて……。
「オレ、千花と結婚するから」
「えっ?」
「先日、プロポーズをさせていただきました。報告を、と思ってさ。透には色々頼むしな」
親友たちの結婚は、それはそれは喜ばしいもので。
「良かった。おめでとう。――早く、そうなってしまえと思ってたんだ。健人は見た目チャラいから、伊達さん逃すと後々苦労するしね」
「……へぇ? オレがチャラいと」
「ハハッ。けど、言ったの僕じゃないから。深町さ…………っ、と、図書館の人がね……」
背中を、一筋の汗が流れた気がした。