コトノハの園で
――
――だいぶ、慣れてきたんじゃ、ないですか?――
当然だけれど、理解は不能だった。
「健人と僕の会話、女性不信とかそういうの聞いて、協力しようとしてくれてたんだって。……自分にも、利点はあることだって。私は聖人じゃない、って」
――森野さんが好きです――
「そうだよな。ただの図書館友達でそこまではなぁ」
「……そうかな? 深町さんは、いい人だと思う。もしかしたら、そういう、なんの利益にもならないことにまで誰かに踏み込むような。だっ、だってさ、好きだけど、そこからはいらない。僕は何も答えを出さなくていいって、言うんだ」
――私は、森野さんに幸せになってほしい――
「卒業まで少し話して本を読むだけだって。僕は僕で、勝手に慣れていけばいいって。信じられないなら、今度、中庭には来るなって、選択権を与えられた」
鮮明に蘇る記憶、情景。
ただただ、視界に入れるだけ
の行為ではなく――あの時、僕は初めて、深町菜々という人を見た。
北風に揺れる髪。半分ほどはマフラーに埋もれていたけれど、風で儚げに舞っていた。
肩の線はとても細く、改めて感じる、小さな人。
そんなふうに力いっぱいで地面に足を着けていては、糸が千切れてしまいそうだと心配になった。
それらの姿は、もしかして、僕の前ではいつもそうだっただろうかなど、今となっては知る術もないのだけれど……。
いつもより、もう少し長い時間見たその顔は、我慢ばかりしているような、真っ赤で、とても人間らしく、憧れをも抱いてしまいそうだった。
僕も、こんなふうになれたらいいと。