ショータロー☆コンプレックス
本当はビジネス絡みで遅れる訳ではなく、しかもその事実を伏せて話をしなくちゃいけないというのがすこぶる後ろめたい。


『あ、正太郎くん?』


なんて事を考えつつケータイを操作し、耳にあてて数回のコール音を聞いたあと、愛しの瑠美ちゃんの声が響いて来た。


『おつかれさまー。今終わったの?』


「あ、うん。そうなんだけどね、でも…」


考え考え言葉を繋ぐ。


「この後ギャラをもらったり衣装をスタイリストさんに返したりしなくちゃいけないから、もうちょっとだけ時間がかかると思うんだ」


『あ、その合間に電話してくれたんだ?』


「う、うん。ロケバスで待機する事になったから…」


嘘をついている罪悪感で胸がズキズキと痛み、額には変な汗が浮いて来た。


まさか結婚詐欺師(らしき男)を追いかけているなんて言えないもんな。


瑠美ちゃんに余計な心配をかけちゃうし、それより何より、辻谷にこの件は他言はしないと誓ったのだから。


「エキストラの立場で『早くしてくれ』なんて言える訳がないもんね。そういう時に大人しく、礼儀正しく振る舞っておかないと、今後仕事がもらえなくなっちゃうかもしれないから」


『そうだよねー。この世界、スタッフさんを敵に回したらやって行けなくなっちゃうもんね』


瑠美ちゃんはしみじみ、という感じで言葉を発した。
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