ショータロー☆コンプレックス
必死に運転席の方に体を伸ばし、耳を傾け、言葉を聞き取ろうとしたけれど、辻谷は勝手に話を終わらせてしまった。


何だよ~。


ここまで散々言いたい放題言って来たくせに、こっちが聞きたい事は誤魔化すんだから。


「おっ」


そんな風に心の中で愚痴っていると、辻谷は今度はテンション高く声を上げた。


「よろこべ、ショータロー。お前のこと、そろそろ解放してやれそうだぜ」


言いながら、前方に向けて顎をしゃくる。


『え?』と思いつつ、促されて視線を向けると、かなりの車間距離を保って尾行していた渦中のゴルフが、右にウィンカーを出し、ある建物の敷地内へと入って行く所だった。


「あ、あれって……」


「ラブホだな」


一瞬言葉に出すのを躊躇したオレに向かって、辻谷は何でもない事のようにあっさりと答える。


車はいつの間にやら、先ほどまで走っていた商店街を抜け、さらに道幅の狭い、一方通行の路地へと差し掛かっていた。


道の両脇に見るからに怪しげな建物ばかりが軒を並べる、いわゆる「風俗街」と呼ばれる一角だ。


ゴルフはその中でも一際ハデハデしい外観のラブホテルの、駐車場に繋がるのであろう門をくぐって行った。


当然、辻谷も後に続く。


徐行しながら敷地内を進んで行くと、すぐに、左右に車が5台ずつ置ける駐車場へとたどり着いた。
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