ショータロー☆コンプレックス
置ける台数が少ない上に一つ一つのスペースが狭く、八割がた埋まっているこの状態で車庫入れするのはなかなかの難儀だ。


この界隈は立地的に基本は徒歩の客の方が多いだろうから、駐車場はあまり広く確保しなかったのだろう。


ゴルフは向かって右手、奥から2番目のスペースにバックで駐車している所だった。


辻谷は同じ並びの一番手前に前進で車体を滑り込ませると、エンジンを止め、すぐに体を捻り、車内から外の様子を伺う。


他の車が邪魔をしてゴルフをダイレクトに見る事はできないけれど、ホテルの出入口を視界に納めるには好都合の位置だった。


「違うな……」


辻谷はポツリと呟く。


「あの女性は、結婚詐欺のターゲットではなさそうだ」


「え?何でそんな事が分かるんですか?」


「結婚をエサに騙すからには、女性に夢を見させなくちゃいけないんだ。貧乏設定で母性本能をくすぐったり、超エリート設定で尊敬の念を抱かせたり、やり方は色々あるけど、いずれにしろ、ある程度段階を踏んでから、美しい演出の元で一夜を共に…っていう流れにするハズ。出会ってすぐだろうに、こんないかにもヤル事だけが目的のホテルに連れ込む訳がないだろ」


「ヤ、ヤルって……」


「まぁ詐欺じゃなくたって、普通の男女でもいきなりそんなシチュエーションにはならないだろうけどな」
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