ショータロー☆コンプレックス
「仕方ないだろがっ」


顔をしかめながら、辻谷は右足に重心がかかるようにして立ち上がる。


「誰のせいだと思ってんだよっ。電池が切れたロボットみたいにフリーズしやがって!」


「だ、だって、あの男と目が合っちゃったから……」


「あのままだったら絶対アイツ、「何見てんだよ」とか言いながらこっちに因縁付けに来たぞ。そういう輩なんだから」


「で、でも、だったら普通に鍵を拾って、俺を連れて逃げてくれれば良かったじゃんか」


「そんなんしたらますます怪しいだろうがっ。バカか?お前」


鼻を鳴らしつつ辻谷は続けた。


「あの場合はゲイカップルが痴話喧嘩してるふりして誤魔化すしかなかったんだよ。それならラブホテルに、ヤローが二人でいる事の言い訳にもなるし」


そこで辻谷はチッと舌打ちした。


「ったく。一瞬だけど、アイツに顔見られちまったじゃねーかよ。これから尾行がやりづらくなるな」


あくまでも自分の事しか考えていない辻谷に、ここまで奇跡的な強度で必死に耐えていたオレの堪忍袋の緒が、プチっと音を立てて切れた。


「……たのに……」


「あ?」


「今日は瑠美ちゃんとファーストキスする予定だったのに!」


そう言葉を吐き出したのと同時に、目ん玉からぶわっと涙が溢れ出す。
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