僕と、君と、鉄屑と。

(2)

 そして、僕は、泣いた。直輝のいないベッドで、直輝の匂いに抱かれて、僕は泣いた。
 なぜ僕は、こんなシナリオしか書けないんだろう。誰も、幸せになっていない。誰もが、傷ついている。それが現実なのに、僕はまた、シナリオを書いた。愛する、直輝のために。僕は直輝さえ、幸せになれば、それでいい。他の人間が不幸になろうが、悲しみに打ち拉がれようが、構わない。こんな傷はね、一瞬で治るんだ。君の未来は、僕が描いた、輝く未来。君は莫大な資産を手に入れ、思う存分、その愛とやらを形に変えて、可哀想な貧民達に、ばらまけばいい。それが君の夢なんだから。その夢のために。

 直輝は僕のために、僕は直輝のために生きている。
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