僕と、君と、鉄屑と。
 その夜から、直輝は、麗子の部屋と、僕の部屋で、偽りの愛と、真実の愛を交わすようになった。初めは苦悩していた彼も、次第に、その配役を受け入れ、自分の分身の発生を心待ちにするようになり、偽りの愛の割合が増加していく。偽りの愛を与えられた麗子はより美しく、より魅力的になり、あの、寒い、と僕に抱きついた、哀しい、寂しい女は、もうどこにもいなくなった。
 ふむ。やっぱり僕は、間違っていなかった。これであの女も救われた。君と僕にも、ね、子供ができる。何もかも、上手くいったじゃないか。

 
 そして、契約から一年が経った頃、彼女の胎内に、新しい命が宿る。
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