僕と、君と、鉄屑と。

(2)

 高校生の頃、クラスメイトの女の子に告白されて、つきあったことがあった。初めてのキスも、セックスも、その子とした。でも、俺は山と、図書館と、教会にしか出かけたことがなくて、彼女を楽しませては、やれなかった。彼女はつまらない、と言って、他の男のところへ行ってしまった。
 その後も、何人かの女の子が俺に想いを打ち明けてくれて、俺はそのたび、その子を恋人にした。でも、結局、俺の恋人達は、俺をつまらないと言って、俺の元からいなくなった。
 大学に入学した俺は、変わろうと『努力』をした。飲みたくもない酒を飲み、吸いたくもない煙草を吸い、騒々しい油臭い居酒屋で、誰かと騒ぎ、愛してもいない女と、愛のないセックスをした。全く、虚無感しか起こらない生活に、俺は疲れ果て、やはり山に登り、教会で祈り、本を読み、空いている時間は、誰かを救うために使う、つまらない生活に戻った。つまらない男だと、自分でもわかっている。それでも、俺はもう、それでよかった。自分を偽らないことで、俺は俺を愛し、救われていた。

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