今宵、月が愛でる物語
『遊び相手』

葵はそう言った。

………寂しそうに。

「…………………。」

そんな風に思ってたのかと正直ショックだったが、よくよく考えれば全ては俺の責任だ。

ココ以外では会ったことがない。

好きだと言ったわけでもない。


でも………。


「お見合いしてて、お前の顔ばっか浮かんだよ。だから断ったんだ。」


「………え?」

身を固めてはと半ば強引に薦められた見合いの席。目の前に座った女性は涼やかな美人だったけど。


「欲しいと思える女じゃなかった。それどころか………、お前が欲しかったんだって気づいたよ。」


「…千景さ……。」

その言葉に葵は驚きの表情を浮かべたけれど驚いたのは俺の方だ。

いい歳した大人が恋だの愛だの、そんなのみっともないと思ってたはずなのに…。

だからこそ、葵との関係は外に漏らさなかった。

でも心はちゃんとこいつを求めてた。

今更それに気付かされた。


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