今宵、月が愛でる物語
何度も彼女を招き入れた部屋に連れて行く。

「コーヒー…でいい?」

「あ、うん。…いや、私淹れるよ。祐は座ってて。」

「………え、ああ。ありがと。」

ぎこちない会話はふたりの間に距離ができた証拠だ。

「はい。」

ふたり分のコーヒーを淹れ、ダイニングテーブルに向かい合って座る風華。

その左手の薬指に……ダイヤの指輪が光る。

「風華…。その……指輪。」

「………………」

「もしかして、報告しに来た?」

「……………うん。」

「…そっか。」

「式は、いつ?」

「………明日。」

…………………

沈黙が流れる。俺は…

「幸せ…か?」

そう聞くしかなかった。

俺を見る風華は…切なそうに笑う。

「ん。」



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