この恋を叶えてはいけない
 
「おかあさんの……
 最期の願いは……


 あたしが普通に結婚して……
 子どもを産んで……孫の顔を見せてあげる…こと、だったの……」


「……」



涙声で話すあたしの言葉を、駿はただ黙って聞いていた。



「だけどっ……

 結局っ……
 その願いは叶えてあげられなかったっ……」


「唯香っ……」



過呼吸になりそうなあたしを、
駿が必死になって抱きしめた。


その腕を振り払わないといけないと思ったけど
なんとなく…その腕は、男として抱きしめられた腕じゃなくて……

兄として、あたしを抱きしめているような気がして……


強く抱きしめるその腕を、突っぱねることはしなかった。



「だからっ……

 それ以外はっ……
 孫の顔を見せてあげること以外の願いはっ……」


「…っ」



「叶えないとっ……

 ダメなのっ……」
 
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