この恋を叶えてはいけない
「追いついたぁ……」
「走ってきたんですか?」
「そー。唯ちゃんが、お昼に行きそうやったから」
と、さわやかな笑みを向けてくる。
ということは……
「お昼、一人?
一緒にとらへん?」
やっぱり、そういうことか。
「……いいですよ」
「よしゃ!ほな行こう」
とはしゃぐ戸村さんの横に並んで、あたしたちは適当な店でランチを取ることにした。
「やっと唯ちゃんとゆっくり話せたなぁ…」
「そうですね。
再会しましたけど、なかなか接点とかなかったですもんね」
戸村さんを担当しているのは、知香ちゃんのほう。
だから、顔は合わせていたものの、会話らしい会話はしてこなくて、挨拶くらいしかこの1週間しなかった。
ましてや、プライベートで話すなんて
アルバイト時代、一緒に帰ったあの日以来で……。
「ずっと気になってたんやで」
「え?」
「バイト。
急に辞めよって」
「……」
確かに、あたしがバイトを辞めたのは急だった。
だけど事情が事情なだけに、
店長はしぶしぶ承諾をしてくれた。
「何かあったん?」
少し心配そうに覗き込んだ戸村さんに、あたしはあえて明るく微笑んだ。