この恋を叶えてはいけない
「ふふー。ありがとぉ」
前方から、甘い声が聞こえ、自然と顔を上げた。
そこには、明らかに酔い気味の女の子が、隣の男の人の腕に絡みついている。
どうやら会計を済ませているようで、二人はもう帰るようだ。
そんなことを思いながら、相手の男の人へとなんとなく視線を向ける。
だけどその瞬間……
「……っ!!!」
ドクン…と……自分でも聞こえるくらい、大きく心臓に衝撃がはしった。
う、そだ……。
まさか……こんな偶然……。
大阪と言ったって、そう狭くない。
何も言わずに来た今、偶然に出くわす確率なんて0に等しいくらいなのに……
「もー愛してるぅ……!!」
そう言って、女の人が絡みついている相手は……
「しゅ、ん………」
この世で一番逢いたくて
一番逢いたくない彼だった。