この恋を叶えてはいけない
 
途端に訪れる静寂。

ただ立ち尽くすあたしに、店員さんが気になって


「お客様、どうかされました?」


とたずねてきた。


「あ……いえ……なんでも……」


そこでようやく我に返って、重たくなった足をなんとか動かした。


息苦しくて……
頭がこんがらかって……


泣きたいのかすらも分からない。



足を引きずりながら、なんとか店を出ると、そこにはもう駿たちの姿はなくて、
代わりにやってきたのは、



「ほな、行こか」



と、爽やかな笑みを向けてくる戸村さん。

だけどあたしの異変に気付いた戸村さんは、すぐに心配そうな顔になり、


「どうかしたん?」


と問いかけてくる。

一度戸村さんの顔を見ると、なんとか笑顔を作って、


「なんでもないです」


とだけ答えた。
 
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