最後の恋にしたいから
「課長、本当にありがとうございました」

髪まで乾かせてもらい、すっかり体が温まった。

だからか、少し気持ちもスッキリした。

課長はリビングのソファーに座ってテレビを見ていたところで、ルームウエアに着替えている。

私に貸してくれたTシャツにスエットは、どうやら普段のルームウエアらしく、まるでペアルックだ。

それがおかしくて、つい笑ってしまった。

「私たち、同じ格好ですね」

すると、課長も声を出して笑った。

「確かに。だけど、古川には大きかったな」

立ち上がり、私の側に来た課長が目を細めた。

「課長って、背が高いですから。パンツは裾をかなり折ってますし、Tシャツも長袖になっちゃいました」

ちょっと恥ずかしく思いながら言うと、課長はさらに笑顔を浮かべた。

「男から見たら、そういうのいいけどな」

「えっ?」

それは、どういう意味に捉えたらいいのだろう。

意味深なのか、まるで意図はないのか。

戸惑いつつも、課長はそう言っただけで、私の服をお風呂場へ持って行く。

「それ、どうするんですか?」

未だにしずくが滴り落ちる服をハンガーに掛け、お風呂場にあるランドリーパイプに吊るした。

「ここ、浴室乾燥機がついてるんだ。けっこう、重宝してるんだよ。これなら、服もすぐに乾くから」

「便利ですね。ここって、賃貸ですよね? それでも、こんな機能があるなんて羨ましいです」

確かに、これならすぐに乾きそうだけど、手を煩わせてばかりで本当に申し訳ない。

それに……。

「課長は、お風呂どうするんですか? これをしていたら、入れませんよね?」

私の為に、自分だって雨に打たれたのに。

「いいんだよ。気にしなくて。後から入るから。それより、何か飲むか?」

キッチンへ行った課長は、戸棚の中を確認している。

「いいえ! 大丈夫です。本当に、お気遣いなく……」

ここまでしてもらって、さらに飲み物なんて申し訳なくて貰えない。

慌てて断ると、彼はお茶の葉っぱが入った缶を手に取った。

「渋いけど、体を温める王道だ」
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