最後の恋にしたいから
「は、はい……。起きてます」

まさか、待っていたとは言えない。

それにしても、緊張して手が震える。

おまけに声も震える。

「なあ、もしかして緊張してる?」

どうやら、課長にしっかり伝わったらしく、そんな風に聞かれてしまった。

「そりゃあ、緊張しますよ。課長から電話なんて……」

そう答えると、課長は声を殺して笑っている。

「ごめん、ごめん。だけど、古川……、じゃない。奈々子は……」

「あの、別に『古川』でいいですよ」

上司に名前を呼ばれるのは、どうも違和感でいっぱいだ。

言い直すくらいなら、普通に『古川』で構わない。

「いや、それじゃあ付き合う実感がわかないだろ? 形から入るのも大事なんだよ」

「はあ……、そんなもんですかね……」

やっぱり意図が分からない。

課長ってば、そこまでこだわって、なぜ私と疑似恋愛がしたいのだろう。
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