最後の恋にしたいから
そりゃ、緊張するに決まってる。

「祐真さんは、緊張しないんですか?」

口を尖らせながら言うと、課長は小さな笑みを浮かべて、ゆっくりと歩き出した。

私も遅れまいとついて行こうとして、砂浜に足を取られる。

ここは砂が柔らかくて気持ちいいけれど、靴を履いていると歩きづらい。

よろけそうになったところで、課長が優しく手を取ってくれたのだった。

「緊張なら、オレもしてるよ」

「えっ? 祐真さんも?」

全然そんな風に見えないのに。

完全には信じられなくて、歩く彼の横顔を見上げる。

すると、それに気付いた課長が私に優しく微笑んだ。

「こんな風に奈々子と歩くこと。それだけで緊張する」

手を握ったまま、課長は歩みを止めない。

そして私はというと、彼の言葉になぜだかドキドキしていた。
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