最後の恋にしたいから
さっそく電車に乗り込むと、想像通り混雑している。

冷房が効いているとはいえ、蒸し暑さにクラクラしそうだ。

電車が傾く度に、人の波に押されて顔をしかめていると、ふと課長が私の手を握ってきたのだった。

驚いて見上げると、優しく微笑んでいる。

「奈々子がはぐれそうだったから、捕まえとく」

「祐真さん……。ありがとう」

課長の手の大きさと温もりは、私の手をスッポリと包んでいて、さっきより全然人の波が気にならなくなっていた。

それにしても課長は、なんてバランス感覚がいいんだろう。

手すりもつり革も持っていない上に、片手は私の手を握っているのに、よろめくことがない。

反対に私はというと……手を握ってもらっているのに、若干強い揺れによろめくと、課長に体を預ける形になってしまった。
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