最後の恋にしたいから
「ご、ごめんね、祐真さん」

ほとんど抱きつく様になってしまい、恥ずかしさがマックスになった私は、顔が赤くなるのを感じながら見上げた。

だけど彼は、まさに余裕な『大人の微笑み』を浮かべて、小さく首を横に振ったのだった。

「構わないよ。本当、人が多いもんな」

そう言った課長は、そっと私の背中に手を回し、まるで守る様に抱きしめてくれる。

その行為が、ますます私をドキドキさせるけど、さらに追い討ちをかけたのは彼の身なりだ。

浴衣を着ている課長は、胸の辺りが若干はだけている。

それが抱きしめられることで顔の近くにきてしまい、気をつけないと弾みで唇が触れそうだ。

人の多さに身動きが取れない私は、目的の駅へ着くまで課長に抱きしめられたままだった。
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