最後の恋にしたいから
「オレも、会いたかったよ。昨日は急きょ仕事で連絡も出来なかったし、こうやって奈々子を抱きしめたかった」

耳元で聞こえる課長の声に、このまま流されてしまいたくなる。

だけど、彼も仕事を終えたばかりで疲れているだろうから、一息つかせてあげないと……。

そっと体を離すと、課長を笑顔で見上げる。

「祐真さん、何かご飯作るね。冷蔵庫開けていい?」

「えっ⁉︎ それは嬉しいけど、奈々子も仕事帰りなんだから、無理しなくていいよ」

課長は私の手を優しく取ると、ソファーへ座らせた。

「奈々子の手料理は、また今度もらう。今夜はデリバリーにしよう」

「うん。分かったわ」

彼の気遣いが嬉しくて、言われる通りその夜はデリバリーにした。

ピザやパスタといった軽食だったけど、課長と二人で食べると特別なものに感じる。

そしてシャワーを貸してもらった後、薄明かりの下で、優しく彼に抱きしめられたのだった。
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