オレンジロード~商店街恋愛録~
仕事を終えて、今日はいつもより少し早めに帰宅した。
しかし、居間に雪菜の姿はない。
寝室を覗くと、朝と同様に、そこでぐったりとしている雪菜を見つける。
「雪菜」
声を掛けると、ぼうっと目を開けた雪菜は、かすれた声で弱々しく「おかえり」と言った。
「あれから、どう? 熱、ちょっとは引いた?」
「熱は大丈夫だけど、それより気持ち悪い」
「何か食べた?」
「うん。お昼に、ちょっとだけ。でもすぐに吐いちゃって」
見ているだけでも痛々しさに胸が締め付けられる。
と、同時に、自分を看病してくれていた頃の雪菜はいつもこんな思いでいたのかと、レイジは改めて思わされる。
「お腹空いてない? お粥でいいならすぐに作るよ」
「食欲ないの」
「マジかぁ。じゃあ、起きられる? 病院行こうよ。点滴もしてもらった方がいい。それで大分楽になるだろうし」
しかし、雪菜は顎先だけでかぶりを振って見せ、
「ほんと、大丈夫だから。いつもみたいに寝てれば治るよ」
と、言った。
どうしたものかと思ったが、無理やり起こすとまた熱がぶり返す可能性もあるため、レイジは雪菜の体の負担を考え、その意思を尊重することを選んだ。
代わりに、レイジはベッドサイドに座り、雪菜の手を握る。
子供みたいな雪菜の体温。
「ごめんね、雪菜」
呟くように、その言葉が口から漏れた。
「俺、ほんとダメな男だよね」