オレンジロード~商店街恋愛録~
沈黙が続く。

が、少しの間を置き、息を吐いたハルは、



「わかったよ。少しの間だけならな」

「ほ、ほんと?!」


結は勢いよく顔を上げた。

ハルは諦めたようにうなづき、



「その代わり、餌やトイレはお前が用意しろよ」

「任せて!」

「でも、あんまり長い間、飼い主が見つからなかったら、この子猫は捨てに行く」

「そんな……」


やっぱりひどい。

と、思ったが、肩をすくめたハルは、



「まぁ、そうならないように、仕事の合間になら、飼い主探しくらいは協力してやるからさ」


ハルがこの10年をどう過ごしていたのかは知らない。

けど、でも、何だかんだで優しいところは、昔のままだ。


そして、結はあの頃、ハルのそういうところを好きになったのだと、今更になって思い出した。



「あたし、頑張るよ、飼い主探し。だって、この子を守ってあげられるの、あたししかいないんだもん」

「すごい使命感だな」

「うん。仕事辞めて以来、初めて燃えてるかも、あたし」

「そりゃあ、何よりだ」


ハルは他人事みたいに言いながら、笑っていた。



別れて以来、ハルとまともに話したことはなかったが、今は何だか昔の友達関係に戻ったみたいで、嬉しかった。


本当に偶然だったけど、ハルでよかったと思う。

ハルが信頼に値する人だということは、ちゃんとわかっているから。

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