オレンジロード~商店街恋愛録~
翌朝、結は子猫のために、大量の餌やトイレシートを購入し、鼻息荒く『遠藤書店』を訪ねた。
ちょうど開店準備をしていたところだったらしいハルは、そんな結を見て、思いっきり口元を引き攣らせた。
「どんだけ買ってんだよ、お前。それ、何日分だ?」
「だって、お腹空くと困ると思って」
ハルはあからさまに呆れた顔をしたが、ため息混じりに肩を落として、それ以上は何も言ってはこなかった。
「猫、多分、居間にいるから。裏からまわって勝手に中入って。俺、やることあるし」
「はーい」
言われた通り、結は店の裏手にある玄関口から、昨日同様、家に上がった。
適当な場所にトイレを設置し、皿に餌を入れた。
子猫は昨日とは打って変わり、餌に目を輝かせて、一目散に皿に飛びついてくる。
すっかり元気そうで何よりだ。
「でも、やっぱ、生後どれくらいかわかんないし、病気してないか心配だから、一度、動物病院に連れてった方がいいかなぁ」
にゃあ。
返事をするように子猫が鳴く。
何だか会話をしているみたいでおもしろくなってきた結は、さらに子猫に話しかけた。
「それにしても、きみはちびっこいねぇ。チビ太。じゃなくて、女の子だから、チビ子か。うーん。でも、チビ子ってあんまり可愛くないから、チコでいいね」
ふにゃあ。
また返事をするように子猫が鳴いた。
チコに決定。
「じゃあ、そうと決まったら、住環境の改善だね」
ハルの家は雑然としていて、男のひとり暮らしだからか、あまり掃除が行き届いていない。
これじゃあ、ハルのためにも、チコのためにもよくないと判断した結は、早速、部屋の掃除に取り掛かった。