初恋の君は俺を忘れてしまいました。
「昂。帰ろ?」


「・・・おう」


沙菜から帰ろうなんてほとんどなかった。


俺が無理やり行こうって誘うか、どっちかがどっちかをあたりまえのように待っている。


そのどちらかだった。


俺は、速足で自転車を取りに行き、門の前で待っている沙菜に声をかけた。


「お待たせ」


「うん。」


「乗って」


「うん」


沙菜はスクールバックをリュックのように背負い、俺の荷台に乗った。


自転車に乗っていると、風で俺の服を強く引っ張っていることに気が付かなかった。


沙菜は家に着くと、俺の後ろから降りた。


どうしようもないくらいさみしくなった。


「ありがと。明日も来てくれる?」


「・・・もちろん。」


「・・・明日は、うちにきたらポスト開けて?いいもの入ってるから!」


「・・・わかった」


どういう意味かはまた、明日ポストの中身を見たときに聞けばいい。


「・・・沙菜」


「ん?」


これだけは伝えておかなきゃと何となく思った。


「・・・俺から離れない。もう一度約束しよう」


ちゃんと約束なんてしたことなかったのに、したつもりでいたのは俺だけで。


「・・・そばにいろよ」


でも、その現実を見るのがこわくて、無理にでもしたつもりにしたかった。


沙菜は、返事をしなかった。


その代わりに俺に言った言葉。


「・・・ばいばい、昂」
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