ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「おぉ、『かめや』の羊羹か。


いやぁ、うん、気がきくねえ。

さすが香月くんだ。


おい、コーヒーはやめて緑茶にしてくれ」




先生は見るからに嬉しそうに顔を綻ばせた。



作戦成功、と胸の内でほくそ笑む。


これで、少しは懐柔できただろう。




しばらくの間、お茶と羊羹で談笑しながら、私は先生の顔色を窺っていた。



表情が完全に綻んだところで、お待ちかねの本題に入る。




「………それでですね、嶋田先生。

うちとしては、やはり先生のように文壇を引っ張っていらっしゃる作家先生に、今の風潮を反映したようなものを書いていただきたいな、と。


社会色の強いミステリーで、読者に深い印象を与えるような感動もある、そんな作品を書いていただきたいと思っているんです。


こういう複雑な大作は、やはり先生のような作家にしか書けませんので」




「うーん、そうだねぇ。

まぁ、言いたいことは分かるよ」





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