ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
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社に戻ると、私は荷物も置きに行かないまま、すぐに給湯室に向かった。
甘ったるい羊羹を食べたせいで、口の中がべったりと不快だったのだ。
ブラックのコーヒーでも飲まないと、気分が変わりそうにもない。
このしつこく粘っこい甘さが、嶋田泰司という人間を象徴している、なんてことを考えつつ、
給湯室の質素なドアノブに手をかけた、その瞬間。
「やばぁい、かわいい〜」
わざとらしいほど甘く、甲高い声が中から響いてきた。
思わず手が止まる。
なんとなく、ドアは閉めたまま耳を澄まして、中の様子を窺う。
どうやら、女子社員が何人か集まって、ファッション雑誌か何かを見ながら、
この服が可愛いだの、このバッグが欲しいだのと喋っているらしい。
私は心の内で舌打ちをして、遠慮なくドアを開けた。
「あ……っ、香月さん………」
いかにも『見つかっちゃった』とでも言いたげな表情を浮かべる女子社員三人。