ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
それでも男は店を廻り続ける。



長い長い時間をかけて。


そのうち、自分でも、何を探していたのか思い出せなくなってしまうほどの長い時間をかけて。



やがて、探し物のことも、自分の存在でさえあやふやになってきたころ、男は最後の一軒に辿り着いた。



『あれを探しているのだ』



何度も口に出した言葉を、ほとんど無意識に繰り返す。


すると店主が、『お探しのものはこれでしょう』と、あるものを差し出した。



それを見た瞬間、男は気がつく。



『これこそまさに私の求めていたものだ』



虹色に輝く透明な薄い膜でできた光の玉。


少しの刺激でも弾けて消えてしまう、脆くて美しい宝物。



それが男の探していたものだった。



『たいそう壊れやすいものですから、大事にお守りください』



店主はそう言って男を送り出した。



男は張り詰めた光の玉を大事に胸に抱き、闇市を出る。



『これがあればもう何もいらない』



そう呟きながら。




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