ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
最後の一行を読んで、私は息を洩らした。



朝比奈光太らしい小説だった。



透明感があって、幻想的で、繊細で、それでいて胸を抉るような切なさを感じさせる。




「………素晴らしい作品です」




私は素直な感想を述べた。



隣の先生に目を向けると、照れたような笑みを浮かべている。




「………ですが」



「ん?」




私は原稿用紙を膝に置き、両手で頬を覆った。


真っ赤に染まっていることを自覚していたから。




「………恥ずかしすぎます」




低く呟くと、先生はあははっと弾けるように笑った。




「分かっちゃった?」



「分かりますよ、もちろん………こんな明らさまな………」



「だって、これは君へのラブレターだからね」




ラブレターって。


久しぶりに聞いた………。




今にも火が出そうな顔を手でぱたぱと扇いでいると、先生がバッグをがさごそと漁っているのが目に入った。



何も探しているんだろう、と見ていると。




「これ、プレゼント第二弾」




先生は取り出したガラス瓶の蓋をあけ、それについていた輪を空に向けて、ふうっと息を吹きかけた。




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