ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
私は頬を伝う涙を感じながら、漂いながら流れていくしゃぼん玉を見つめていた。




「智恵ってしゃぼん玉みたいだなって思ったんだ」




先生は空を仰ぎながら、ぽつりと言う。




「すごくきれいで、ぴんと張り詰めていて、すごく繊細で、傷つきやすくて。

でも、その繊細さが美しさなんだよね。

見た目じゃなくて………」




先生が言葉を止めたので、私は隣に目を向ける。



優しい眼差しが私に向けられていた。




「だから、俺は、君を抱きしめたいって思ったんだ。

君を大切に包み込みたいって………」




先生が両手を伸ばして、ふわりと私を包み込んだ。



そして、耳許に囁きかける甘い声。




「俺と智恵は、たくさんのひとと付き合ってきたけど………それは全部、まやかしの恋だったんだね。

俺は君に会って初めて、それに気がついたんだ。


ねえ、智恵はどう?」




「…………私も、同じです」




こくりと頷くと、先生は少しの身体を離して、じいっと私の目を覗きこんだ。




「ねえ、俺のこと、好き?」




あまりに真っ直ぐに訊くので、おかしくなって私は少し笑った。




「好きですよ、悔しいことに」




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