ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
先生も「なんで悔しいの」と笑う。




「悔しいじゃないですか。

よりにもよって、初めて好きになった人が、先生みたいな問題児作家だなんて」




すると先生が、「うわ」と声を上げた。



その顔がみるみる赤くなっていく。




「…………なに照れてるんですか」



「だって、初めて好きになったって」



「悪いですか?」



「悪くない! むしろ嬉しくて泣きそう」




先生の声は少し震えていた。




「ねえ、智恵、キスしていい?」



「………聞かないでください」




私まで顔がまた熱くなる。



私たちは真っ赤な顔で見つめ合い、どちらからともなく唇を合わせた。



数え切れないほどのキスをしてきたはずなのに、信じられないくらい恥ずかしかった。




「………なんか、少女漫画に出てくる初恋どうしの中学生みたいじゃないですか、私たち」




恥ずかしさを誤魔化すように言うと、先生がぎゅっと抱きついてきた。




「だって初恋だもん、俺たち」




そうか、初恋か。


これが、本当の恋なんだ。



ひまつぶしじゃない恋って、こんなに恥ずかして、照れくさくて、嬉しいんだ。





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