ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「愛してるよ、智恵」




先生はもう一度キスをして、私の耳に甘い言葉を忍びこませる。




「こんなにも愛しくて、抱きしめるだけで満ち足りるなんて………こんな気持ちがあるなんて知らなかった。

これが愛なんだって思う」




ろくでなしが愛を語っている。



なんだか笑えてきた。




「愛、ですか………。

恋さえ知らなかった私には、ちょっとハードルが高すぎます」




私はまだ、愛なんて分からない。



でも、身体の奥から湧き上がってくるこの温かい気持ちは、愛に近いのかもしれない。



先生は「正直者だなあ」と苦笑した。




「いいよ、それでも。

きっと愛って、恋が時間をかけて熟成されるものだから。

いつか君が俺を愛しいと思ってくれたら嬉しいな」




「………はい」




頷くと、先生は両腕で私の頭をふわりと包み込んだ。



ぽんぽんと撫でられて、このまま眠ってしまいたいくらい、心が幸福感で溢れる。




そして先生は、噛みしめるように、ゆっくりと言った。





「ーーー俺たちは、まやかしの恋しか知らなかった。


だから、これからは、二人で、本物の愛を学んでいこう」







*Fin.






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